月曜日, 5月 14, 2007

ことば


『狩人と犬、最後の旅』という映画。
友だちにススメられてDVDで観た。
すごくよかった。

ストーリーは、夜の雪のようにしんしんと続く。
舞台はロッキー山脈。
太平洋上の小舟のように、雄大な自然の中でポツンと生きる猟師の話し。
真冬マイナス40℃の世界へ、犬ゾリに乗って猟や漁にでる暮らしの息づかいが、リアルに聞こえてくる作品だった。

恋愛やサスペンス、友情物語とか正義とか。
一切なくて、「きっと売れないよね、この映画」そう思われる、いい映画。

ウツクシイシゼン。
夜空を覆うオーロラとか、真っ白な地平線に沈む夕日はきれいだけど。
そのなかで髭は凍ってるし、視界ゼロの吹雪で死にかけるし、湖の氷が割れて落ちるし。
主役のおっさんは、いつも厳しさに吹かれていた。

おっさんの台詞は、人と話すより(犬ゾリの)犬との会話のほうが、まったく多かった。
山小屋(手づくりログハウス)で二人暮らしの奥さん(ネイティブアメリカン)。
登場するたび台詞は「いってらっしゃい」と「気をつけて」。
だからこそ、なにか、が伝わってくる(気がする)。


僕らは伝え合うことが大事だ、言葉にすることで救われている。
けれど、ウサギやカリブーだって、木や草だって、伝え合っている(気がする)。
足音から、匂いから、目元から、息づかいから、そこにおるってことから。

だからいつもみたいに、そんなにたくさんの言葉は、必要ないのかもしれない。