水曜日, 9月 12, 2007

鮎の里

ここ郡上には「イカリ」という、鮎の漁法がある。
1m前後の鉄の棒の先に漁船のイカリ型の針がついていて、それで魚を引っ掛ける。しかし、鮎はアマゴやヤマメより速く泳ぐ魚で。危険を察知した0.2秒後には、水中メガネの視界から消え去る俊足の体を持つ。

そんな魚をどうやって獲るかというと、夜。

ちょうど晴天。
漆黒の川原から空を見上げると、天の川までハッキリ見える満点の星空が谷間に渡っている。
左手に唯一の光源、防水懐中電灯。
右手にイカリ。
全身ウエットスーツに腰に魚入れをぶら下げて準備運動。

ゆっくり川に身を沈める。
じわじわウエットスーツを通して冷水が体に染みて来る。
鮎は夜中でも「瀬」と呼ばれる急流にデカイやつがいる。
サッと一度だけライトを照らす。
ギラっと4、5?
魚影が光る。
急流の泡蔵のなか、踏ん張って流されないように、ライトは極力差さず忍び寄る。
闇と光の中間で、ほんの微かに鮎の魚体を見て、動きを予測して6割運に任せてイカリを引く。
ビビっと右手に伝わる感覚。


1時間で天然郡上鮎が15、6。
いつも寝る前に瞼を閉じると、鮎の陰影が目に浮かぶ。