ある日突然考えた。
「ホントの暮しってなんだろう?」
それは22才の秋。冷たくなり始めた風にちょっと寂しくなったころ。
追われる仕事と、コンクリだらけの都市の風景と、たまの休日を過ごすマンガ喫茶にうんざりしていた。
疲れ果てて夜の街角をふらふら徘徊しながら考える。
「どうしようおれ。」
遠く海外へ旅行に行く金なんかない。
実家へ帰る気はさらさらない。
そこではたと思いたった。
いや、ずっと心の中では望んでいたのかも。
『田舎に住もう!』
きれいな水が流れる川の側に、
雄大な山々に囲まれた土地に、
人と人が近しくあったかい町に、
いのちあふれる里山に!
思い込んだら一目散。
大学のセンパイが、たまたま山の町に住んでいたのでさっそく電話。
「おれ、行ってもイイスカ?」
「ええよ。」
命がけでやっていた仕事も、
大事にしていたギターも、
「ずっと一緒にいよう」って約束してた彼女も、
きれいさっぱり清算して僕は田舎へと向かった。
仕事のアテも、住む家もないままに。
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